マーベル・スタジオが制作中のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のドラマ「デアデビル:ボーン・アゲイン」でキングピン/ウィルソン・フィスクを演じるヴィンセント・ドノフリオさんが、自身の演じるキャラクターがマーベルとソニーの権利的な板挟み状態にあると語りました。
デアデビル/マット・マードック役のチャーリー・コックスさんらとファン・エキスポ・ボストン2024 に参加したドノフリオさんは、今後のキングピンについてステージ上で次のように発言しています。
「はっきりと言いましょう、皆さん、マーベルとソニーの全体の話をご存知でしょう?マーベルによって発明され、マーベルによって書かれたキャラクターが、マーベルとソニーの間で板挟みになっている状況です。ですから、誰が何をするのかを決めるのにとても時間がかかります。」
「私はただ、(キングピンがどこに登場するかを)本当に知らないんです。私のキャラクターは、そのような状況にあり、チャーリーのキャラクターとは違います。ですから、分からないんです。キングピンを演じるという事はそういう事なんです。」
スパイダーマンの権利はまさに蜘蛛の巣の如く複雑で、多くのファンが気づいているように2002年のサム・ライミ監督の「スパイダーマン」から実写映画のスパイダーマンはソニーが権利を保有しています。
1998年、倒産しかけていた当時のマーベルは2500万ドルでほぼすべてのキャラクターの映画化権をソニーに買ってもらおうとしていました。しかし当時のソニーは「スパイダーマン以外のキャラは誰も見向きもしないだろう」と言い、スパイダーマンだけを700万ドルで買うことにしました。そしてこのバラ売りを機に、X-MENが20世紀FOXへ、ハルクやネイモアがユニバーサルへと貸し出されていく事になりました。
細かい契約内容は明らかにされていませんが、この契約を起点としてサム・ライミ監督の「スパイダーマン」映画シリーズがスタートしていきました。そしてソニーの思惑は外れ、スパイダーマンだけでなくX-MENの映画もヒットして、その後2008年の「アイアンマン」からMCUが大ヒットしていく事になります。
「スパイダーマン:ホームカミング」など、トム・ホランドさんが出演するスパイダーマン映画はソニー作品ですがディズニーとマーベルが展開するMCUという扱いになり、ホランドさんが客演する「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」などはマーベル・スタジオだけでなく、ソニー・ピクチャーズが共同制作という形で関与しています。
ではアニメはどうでしょうか。「スパイダーバース」のヒットによってアニメのスパイダーマンもソニーのものと思われがちですが、実際にはマーベル・アニメーションによってディズニーアニメとして制作されているものがあります。もちろんディズニープラスで鑑賞可能です。
ゲームに関しても同じで、PS4、PS5独占(後にPC版リリース)だった「Marvel’s Spider-Man」シリーズがソニーから発売されていますが、過去にはサム・ライミ監督の映画をゲーム化したものがニンテンドーDSでリリースされています。
また、スパイダーマンのソロゲーム以外でいえば「レゴ マーベルヒーローズ」や「マーベルアルティメットアライアンス」といったシリーズはスパイダーマンが登場し、ニンテンドースイッチ等でもリリースされていますし、各種モバイルゲームでスパイダーマンが登場している事は言うまでもありません。
アニメもゲームもスパイダーマン=ソニーになりがちな昨今ですが、実際はそうではないのです。
では実写ドラマはどうでしょうか。
映画と近い媒体である実写ドラマですが、ソニーとマーベルの契約以降にリリースされたスパイダーマン関連の実写ドラマがないため詳しい所はわかっていません。ただし、Netflixの「デアデビル」でキングピンを使えたという事はソニーに権限はないように思えます。一方で、ソニーは映画「ヴェノム」から始まったSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)のドラマとして「スパイダーマン・ノワール」を公式に発表し、「シルク」なども開発中(そして頓挫中)とも報じられています。
今回のドノフリオさんの発言とこれまでの制作例を見る限り、キングピンのドラマでの登場はマーベル(ディズニー)の権限で実行出来るようですが、映画に登場させる場合は「スパイダーマン関連のキャラクター」という扱いになり、ソニーの承諾が必要になるようです。
以前にはキングピンを主軸とするコミック「デビルズ・レイン」がMCUとしてアニメ化される と報じられた事もあり、これもキングピンの実写の扱いが難しい事を表しているのかもしれません。
MCUの「スパイダーマン4」にキングピンが登場するという噂 もありますが、ヴィンセント・ドノフリオさんのキングピンが大スクリーンに登場する日が実現するのか、今後の動きにも注目です。
(出典:Amazon)