2022年3月30日配信のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のドラマ「ムーンナイト」シーズン1エピソード1「The Goldfish Problem.(邦題:もうひとりの自分)」のイースターエッグを中心に原作設定や今後の予想、考察などをご紹介。
※この先はシリーズのネタバレ、および今後の物語のネタバレの可能性が含まれています。ネタバレが苦手な方はご遠慮ください。
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Every Grain of Sand
今回の1話は暗転状態からボブ・ディランさんの楽曲「Every Grain of Sand」(1981年)で幕を開けます。これはボブ・ディランさんがクリスチャンに改宗した後に制作された楽曲で、曲名は「砂の一粒一粒」という意味になっています。その内容は信仰と精神性をほのめかしており、「一粒一粒の砂の中に主の存在を感じる」、「時々私は向きを変える、そこには誰かがいる」などムーンナイトに通じる歌詞になっています。
アーサー・ハロウ
冒頭の時点では名前は明かされませんが、イーサン・ホークさん演じるアーサー・ハロウが登場します。
©MARVEL,Disney
アーサーは砕いたコップのガラス片を自分の靴に入れて履くという謎の行動を取っていますが、コミックのアーサーは痛みについて(他人を実験台にして)研究をしているマッドサイエンティストでした。1話を見る限り科学者には見えませんが、なんらかの方法で痛みを無効化する能力を獲得しているのかもしれません。
また1話でアーサーがアメミットの使者を名乗っており、アーサーの腕にはアメミットの頭部を模したワニ頭の天秤のタトゥーがあることや、杖もワニ頭が象られていることが確認出来るようになっています。
ロゴシークエンス
お馴染みのマーベル・スタジオのロゴシークエンスですが、マイナーチェンジが施されています。今回は映画「エターナルズ」の1シーンが含まれています。
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今の所、「ワンダヴィジョン」から始まったドラマ作品はここに入っていません。
ここで曲がエンゲルベルト・フンパーディンクさんの「A Man Without Love」(1968年) に変わります。
スティーヴン・グラント
オスカー・アイザックさん演じるスティーヴン・グラントが登場し、どう見ても普通ではない寝起きのシーンが描写されています。スティーヴンは自分の異変について既に把握しており、寝ている間に勝手に出かけたりする事のないように、あるいはそうなった事がわかるようにしているようです。
片方の胸ヒレしかない金魚のガスに挨拶し、仕事に出かけるスティーヴン。英語版では今回のエピソードは「The Goldfish Problem.」というタイトルであり、公式ポスターも公開されるなど、金魚のガスが重要な鍵を握っている事が示唆されていました。
アトランティス
これが偶然であるのか(実在の店舗なのか)、あるいはマーベル・スタジオが(セットやCGで)仕込んだイースターエッグなのかは不明ですが、スティーヴンの家を出て左に曲がった先の通りに並ぶ店にはアトランティスと書かれています。
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これが映画「ブラックパンサー:ワカンダフォーエバー」に登場するのではないかと言われているアトランティスの王ネイモアのイースターエッグの可能性はありますが、今回のエピソードではこれ以上のことは何も分かりません。
博物館
スティーヴン・グラントは博物館のギフトショップ店員ということで、職場に到着します。
エジプト展が開催中のこの博物館はアイルランド国立美術館と大英博物館をミックスしたようなデザインになっています。
MCUでは同じく博物館勤務のセルシとデインが映画「エターナルズ」で紹介されており、彼女らもロンドンにいましたが、二人が勤めていた博物館は自然史博物館であり、スティーヴンと同僚というわけではないようです。
少女との会話
職場についたスティーヴンは名前のない少女と会話をします。そこで死後の世界について講釈するスティーヴンでしたが、少女は「がっかりした?楽園から追い返されて」とスティーヴンが死んで戻ってきた事を示唆します。
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コミックのムーンナイトはマーク・スペクターが死んで月神コンシュと契約し、ムーンナイトとして復活するわけですが、この設定を知っているような口ぶりのこの少女は今後のエピソードで何か重要な鍵を握っているのでしょうか?
なお、博物館の壁に描かれたQRコードは実際に機能しており、これを読み取るとムーンナイトの無料コミックが読めるようになっています。しかしFHD画質では読み取りは難しくなっています。興味のある方はここをクリック してマーベル公式に直接移動してください。
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ドナ
職場の上司として登場したドナ。コミックにもドナという名のムーンナイトに関連したキャラクターが登場しますが、現状では同一人物ではなさそうです。
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コミックのドナ・クラフトはスティーヴン・グラントがムーンナイトの活動資金集めのために設立した会社スペクターコープの広報担当、すなわち部下でした。今後スティーヴンが会社を作り、ドナを雇う事でコミックに近い関係になったりするのでしょうか?
デートの約束
スティーヴンは同僚の女性と翌日19時にデートの約束をしているようですが、本人は覚えがない様子。さらにスティーヴンはヴィーガンであるのに、ステーキ屋でのデートだと言うから不思議な事この上ありません。物語上、すでに別の人格も動いていることが明かされるシーンです。
タウエレト、エネアド
スティーヴンの仕事のシーンではなんとも可愛らしいカバの女神のタウエレトのぬいぐるみが紹介され、つづけてアメミットのぬいぐるみも登場します。
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タウエレトはカバの姿をした女神であり、災いを避ける守り神として信仰されていました。
また、エジプト九柱神のエネアドについて言及されますが、コミックでは雷神ソーや軍神オーディン、魔王サタンなどと同じく実在するキャラクターたちです。実写化の噂は今の所聞きませんが、MCUにキャラクターとして登場する可能性がゼロというわけではありません。
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ストリートパフォーマーのクローリー
ストリートパフォーマーのバートランド・クローリーがドラマで紹介されました。ムーンナイトのコミックにもクローリーという名の路上生活者がマークやスティーヴンと身体を共有しているジェイク・ロックリーの協力者(情報屋)として登場しますが、設定として職業が与えられる事になったようです。
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彼が今後物語に絡むかどうかは不明ですが、1話はほとんどスティーヴン・グラントの目線でしか描かれていないため、スティーヴン以外の人格とは既に友人関係である可能性もありそうです。
突然のワープ
自宅に戻って寝たと思いきや、場面は突然太陽が登っている屋外へ。米マーベルの公式 によるとアルプスの麓に移動しているようです。
海外メディア The Direct では、この後のシーンに登場する背景に書かれた文字がスラブ語に見えるということで、バルカン半島のあたりではないかと指摘しています。バルカン半島には架空の国ラトヴェリアが存在し、記事ではこの場所そのものがラトヴェリアである可能性を指摘しつつも、ドクター・ドゥームが支配しているのであればアーサー・ハロウのような人物がのさばっていないだろうとも指摘しています。
スカラベとアメミット
スカラベは日本語でいう所のフンコロガシであり、古代エジプトでは聖なる虫とされていました。そんなスカラベを象ったアイテムをポケットから見つけたスティーヴン。更に謎の声が聞こえる中、間もなく銃撃を受け追われる事になります。
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逃げた先では冒頭で登場したアーサー・ハロウが怪しげな集会を開いており、ここで彼がヴィランであることを示すようにきな臭いシーンが描かれています。
ハロウの腕に刻まれた天秤は人の魂を裁定するようで、罪人と判断された場合は神話のアメミットが実在しているかの如く、その生命を奪われてしまうようです。
神話においてアメミットはワニの頭部、ライオンの上半身、カバの下半身を持つ合成獣の姿をしています。裁定は死後、冥界において人が転生する前の儀式として行われるのですが、ハロウの裁定は生きている間に行われるため、悪事を未然に防ぐという名分があるようです。
謎の声は「スカラベは命だ」と悪人に渡さないように命令しますが、それ以上の事は説明されません。コミックのムーンナイトはスカラベダーツと呼ばれる武器を有しているため、コミックと同様に武器になったり、ムーンナイトの変身に必要なアイテムとして扱われていくのかもしれません。
カーチェイス
ハロウからスカラベを返すように要求されたスティーヴンはいつの間にかギャングを倒している事に動揺し、停めてあった車に乗り込んで逃げ出します。免許がないと言いながら車に乗り込んだのはかなり愚策なような気がしますが、道中何度か意識を失いつつ、気づけば自宅に戻っていました。
なお、このカーチェイスシーンは予告にも登場していますが、予告公開時にはファンタスティック・フォーのイースターエッグ ではないかと言われていた部分が実際には関係なかった事が明らかになりました。
予告で見つかっていた「von D」は実際には車のフロント部から「von Darrelman」 である事が判明し、ドクター・ドゥームとは関係なかったようです。
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スティーヴン・グラントの解離性 同一性障害
物語中盤以降、たびたび意識を失うスティーヴン・グラントですが人格が切り替わっている事は明白です。時折聞こえる謎の声はスタッフロールを見ればコンシュの声である事が分かります。
コンシュはスティーヴンの事を「寄生虫」と呼び、「我々の邪魔をするな」と話している事から、コミック同様にメインの人格はマーク・スペクターであり、マークとコンシュは既に結託しており、スティーヴン・グラントは主たる人格ではない事を示しているようです。
ガスの謎
目覚めたスティーヴンはガスの異変に気づきました。片方しかなかったヒレが両方にあったのです。ガスをポスターのようにミキサーに入れてペットショップに向かい抗議するも、「昨日も来た」といっていまいち話があいません。
おそらくは別の人格が昨日来ていたのでしょうが、元のガスはもういないのでしょうか・・・。
大遅刻のデート
ペットショップで時間の異変に気づき、すぐに戻ってデートの準備をして向かうも結局彼女は現れませんでした。電話をしてみるとデートの約束は2日前だと言われ、こっぴどくフラレてしまいます。
意気消沈のスティーヴンでしたが、ヴィーガンであるはずのスティーヴンはそのままステーキを注文するのでした。この時は口調と表情に少し変化が見られ、別の人格が画面に表示されたのかもしれません。
もともとデートに誘った人格がいるはずで、それが傭兵のマーク・スペクターであるかどうかは今の所わかりません。コミックではスティーヴン・グラントは大富豪のプレイボーイですが、MCUのスティーヴン・グラントは庶民的な人物として描かれており、プレイボーイ要素もありません。原作コミックにはタクシー運転手のジェイク・ロックリーという人格が存在しており、ジェイクがデートに誘い、ステーキを食べて帰った可能性もあるかもしれません。
スティーヴン・グラントの母親
スティーヴンがたびたび母親と電話をするシーンがありますが、実際に母親の声が聞こえてくる事はありません。留守電メッセージを残しているだけとも考えられますが、スティーヴンは母親に報告しているつもりで実は別の人格への報告なのかもしれません。
漫画「ジョジョの奇妙な冒険」には電話を通じて別の人格と会話をするキャラクターが登場しますが、スティーヴンも(一方通行ですが)同様の事をしているのかもしれません。
この母親は実在し、今後の物語に登場する事があるのでしょうか?なお、コミックではマーク・スペクターの母親が存命である事は分かっていますが名前も設定されておらず、重要視されていないようです。
レイラからの連絡
涙のデートから帰宅したスティーヴンはチョコを頬張っています。通常、チョコはヴィーガンが口にしないもののひとつで、これがヴィーガン向けの専用チョコなのかは分かりません。
そうこうしているうちにスティーヴンは自室の異変に気づき、部屋を探索して見慣れないガラケーを発見します。充電器をつないで通話履歴を見るとレイラという人物の名前が並んでおり、ちょうどまたレイラからのコールがありました。
電話に出て会話するも話が噛み合わず、訛りが変だと指摘され、切られてしまいます。
この「訛り」は日本語吹替ではまったく分かりませんが、英語版ではスティーヴン・グラントはイギリス訛りの英語を話すキャラクターとしてオスカー・アイザックさんが演技されています。ただし、アイザックさんはグアテマラ生まれのフロリダ育ちであり、イギリス人から見ると綺麗なイギリスアクセントとは言えないようです。
吹替版はマークが関東弁でスティーヴンが関西弁、というわけには行かず、あくまで声の演技で分けていくようです。
なお、着信履歴に表示されるレイラ以外の人物、デュシャンはコミックのジャン=ポール・デュシャン(通称フレンチー)を参照している可能性がありそうです。デュシャンはマークの傭兵仲間であり、レイラもマークの友人という事で、二人が心配してマークに連絡を寄越していると考えられます。
マークからの警告
鏡越しにマーク・スペクターが現れ、スティーヴンに詮索を止めるように警告しますが、スティーヴンはパニックを起こしてしまいます。さらにポルターガイスト現象のようなものが起こり、スティーヴンは部屋を飛び出してしまいます。その後は予告にもあったエレベーターのシーンの後、通勤バスへとワープし、バスの外にコンシュの幻覚を見るのでした。コンシュは月の神ですが、日中でも話しかけたり姿を現したりぐらいは出来るようです。
バスの男
博物館にたどり着いたスティーヴンですがJ.B.に助けを求めるも取り合ってもらえません。そうこうしているうちに上司のドナが仕事を命じますが、スティーヴンはそれどころではありません。ドナに「ちょっと待って」という目線の先に何かを見つけたスティーヴンは「まずい、バスの男だ」といいカメラが向いた先には深緑のジャケットの男性が映されます。
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この男性はバスの中にもいましたが、ハロウの手下なのかはっきりしません。スティーヴンはこの男を追いますが、途中でハロウに捕まることになります。その少し後のシーンでスティーヴンはハロウの手下に囲まれますが、先に消えたこのジャケットの男は表れませんでした。
スティーヴンの行く手を阻んだ別の男もバスに乗っていましたが、カメラを携えた女性はバスにはいませんでした。
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追ってきたハロウ
ハロウに追われ、博物館の警備員ロニーに助けを求めるも「アメミットを称えよ」と口にし、彼もまたハロウの信者である事が判明しました。かつてのヒドラやフラッグスマッシャーズのように、ハロウもひっそりとテリトリーを拡大しているようです。
アメミットがいればいろんな惨状が阻止できたと説明するハロウですが、ここで紹介されるのは実在の世界の有名な事件についてであり、MCUで最も大規模な虐殺であったサノスについては言及されませんでした。生命が戻ってきたからサノスは罪人としてカウントしないのでしょうか。
裏切り
ハロウの説明によると、アメミットは他の怠惰な神々やアバターに裏切られたとの事。その裏切ったというアメミットのアバターは「敵の敵は味方」として今後登場するのか気になる所です。
ハロウはスティーヴンを追い詰め裁定しますが「混沌を抱えている」と戸惑います。スティーヴンは無罪でマークが罪を抱えている、というような事を示唆しているのでしょうか。
ムーンナイト
その場を逃げ出し、仕事に戻るスティーヴン。ハロウも「放っておけ」と追うことはしません。ハロウには罪人と裁定された相手しか殺せないルールがある可能性がありそうです。しかし部下に命じて殺させる事も出来ると考えると、単にスティーヴンの命だけが狙いではないのは明らかです。
そして閉館後、事態はまた急転します。
犬のような鳴き声を聞いた気がしたスティーヴンが奥へと進むと、そこには犬の頭をした人型の怪物がいました。怪物に追われトイレに逃げ込んだスティーヴンの鏡越しにマークが再び現れ「コントロールを渡せ」と告げます。スティーヴンがそれを受け入れるとムーンナイトへと姿が変わり、怪物をあっさりと倒してしまいました。
人型の犬頭ということでアヌビス神を連想する所ですが、アヌビスをそんな簡単に倒せるのであればアメミットを恐れる必要もなさそうですし、コンシュを裏切ることも簡単に思えるため、この怪物は単なる眷属であると考えるのが妥当なようです。
全体的に鏡、水面、ガラス面などにスティーヴンが映り込むシーンが多用され、本作の主人公の特徴である多重人格という要素を強調するエピソードでした。
そして英語タイトルどおり「金魚の問題」が残されて1話が終了。ガスはどこへ行ってしまったのでしょうか。ハロウの狙いや、スカラベの何が重要なのかも明かされないまま次回に続きます。
ドラマ「ムーンナイト」シーズン1はディズニープラスで配信中、次回、第2話は 2022年4月6日16時 より配信予定です。