マーベル・スタジオ制作のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の映画「ソー:ラブ&サンダー」のイースターエッグや考察など、いくつかご紹介しています。完全なネタバレを含む記事になっていますのでご注意ください。クレジットシーンの解説 については別の記事をご確認ください。
※これより先は「ソー:ラブ&サンダー」のネタバレを含んでいます。ご覧の際はご注意ください。
sponsored link
最初の犠牲者
ゴアの最初の犠牲となった神ラプーを演じているのはジョナサン・ブルーさん。ニュージーランドのコメディアンで、タイカ・ワイティティ監督が監督・脚本を担当した「シェアハウス・ウィズ・ザ・シャドウズ」(2014年)に出演されていました。
ラプーはマーベル・コミックには登場しないMCUのオリジナルキャラクターであり、作中でゼウスが言及しているように下級神という事で使い捨てのキャラクターのようです。
ゴアとネクロソード
ゴアのバックストーリーはコミックとほぼ同じです。妻や息子が削除されているだけで、その信仰心にも関わらず家族を見殺しにされ、自分のことしか考えない神々に対する復讐を始めるというのは同じ展開となっています。
惜しむらくはゴアが神殺しの異名を持ちながらも、視聴者にとって初見のよく知らない神々を数人殺しただけでその脅威が伝わりにくかった事。コミックでは過去や未来から来たソー達を殺しており、当時の読者にインパクトを与えていました。その分クリスチャン・ベールさんの演技により、ゴアの動機と感情はすばらしい表現になっていました。
ゴアの持つネクロソード、オールブラックはセレスティアルズをも殺す剣です。コミックではシンビオートの神祖たるヌルが作り出した剣でシンビオートで作られていますが、ソニーとの権利の関係上、それらのワードは登場しませんでした。
しかしネクロソードから生み出されたモンスターたちはヴェノムと共通するヴィジュアルになっており、多くを語らないだけで設定的にはコミックのままという印象でした。
アインシュタイン・ローゼン橋
ジェーン・フォスターが映画「マイティ・ソー」(2011年)で研究していたアインシュタイン・ローゼン橋はワームホールの別名。ジェーンはフォスター理論として「マイティ・ソー」で判明した事実を本にまとめ、学者としての功績をあげていました。
隣で本を読んでいた男性に「インターステラーは見た?」と聞いていますが、2014年公開のクリストファー・ノーラン監督のSF映画「インターステラー」 の事。こちらも「愛」がテーマのひとつとなっています。
コーグの語る英雄譚
コーグがソーの伝説を子どもたちに語るシーンでは少年のソーの姿が表示されていますが、これはソーを演じるクリス・ヘムズワースさんの息子のトリスタンくん。
また、トリスタンくんの双子のサーシャくんは、ゴアに捕らえられたアスガルドの子供たちの1人で、姉のインディア・ローズちゃんはゴアの娘であるラブを演じています。
その他、ナタリー・ポートマンさんの子供たちやタイカ・ワイティティ監督の子供たちも、ゴアを演じたクリスチャン・ベールさんの子供たちもゴアにさらわれた子どもたちの役で登場しています。
新型コロナウイルスによる封鎖でロケ地から動けなくなった子供たちにとっては楽しい暇つぶしになったかもしれません。
ガーディアンズとの別れ
ソーとスターロードとの別れのシーンでは地球式の握手、からのアスガルド式の握手、からの蛇というやり取りが行われています。
蛇と言えば「マイティ・ソー/バトルロイヤル」にて「俺がなでようとしてヘビをつまみ上げたら、元の姿に戻って、“ジャーン!僕だよ!”って刺して来たんだ。8歳の時だ」とロキに刺された事を明かしているので、スターロードにこれからの旅に注意するよう警告しているのかもしれません。
トンスベルグ
ニューアスガルドはトンスベルグという実在の街に作られており、この地はMCUで昔から登場している場所です。
西暦1000年ごろ、この地でオーディンがフロスト・ジャイアントのラウフェイ軍と戦い、その際に落としていった四次元キューブがこの地で保管され、この地域の地球人たちがオーディンを崇拝するようになりました。そして第二次大戦に入りレッドスカルが侵攻し、キューブを強奪、キャプテン・アメリカの物語へとつながっていきます。
「マイティ・ソー/バトルロイヤル」にてオーディンが消えた地もここではないかと考えられています。
ダリルの再登場
当ブログの熱心な読者なら楽しみにしていたかもしれないダリルがアスガルドのガイドとして再登場しました。再登場といってもダリルはMCUの本編に登場したことはなく、外伝的なショートフィルムに登場していたキャラクターです。
ダリルの再登場は「ラブ&サンダー」のプロデューサーが1年ほど前に示唆 していましたが、その言葉どおりとなりました。
チーム・ソーはマーベル・スタジオが制作した公式のショートフィルムですが、MCU本編との致命的な矛盾を抱えているため、これをカノンと認めるべきかどうかは長年ファンの間で議論されています。とは言っても映像自体は楽しいものであり、ダリルが実際に映画に登場する事になるぐらい好かれているのは事実なようです。
観光地となったニューアスガルド
ニューアスガルドは今や人気の観光地となっているため、そこにはいくつものショップが並んでいます。その中で目を引くのはふたつ。
ひとつめは「Cocktails&Dreams」というお店。これは、トムクルーズさんが映画「カクテル」(1988年)で開店したかったバーの名前です。
もうひとつはMCUと大いに関係のあるアイスクリーム屋さんの「インフィニティ・コーンズ」。インフィニティ・ガントレットとインフィニティ・ストーンをあしらったロゴのショップですが、「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」の冒頭で多くのアスガルド人がサノスによって殺された事を考えると趣味が悪いように思えます。とは言え、ソーも登場した頃は地球人との感性がかなりずれていたことを考慮すると、アスガルド人にとっては当たり前のジョークなのかもしれません。
ニューアスガルドの映像は予告でもあまり登場しませんが、海外メディア エンターテイメントトゥナイト の舞台裏映像 では比較的よく観察出来るようになっています。
演劇ふたたび
前作「マイティ・ソー/バトルロイヤル」では前前作「マイティ・ソー/ダークワールド」を舞台化した演劇がアスガルドで行われていましたが、彼ら舞台俳優は生き残っていたようでニューアスガルドにおいて「バトルロイヤル」を再現する演劇を行っていました。
ソー役にクリス・ヘムズワースさんの兄ルーク・ヘムズワースさん、オーディン役にサム・ニールさん、ロキ役にマット・デイモンさんが前作から引き続き再登場し、ヘラ役にメリッサ・マッカーシーさんが新たに加わっています。
また、演劇後のカーテンコールに登場した舞台監督役はメリッサ・マッカーシーさんの夫ベン・ファルコーンさんで、彼もまたタイカ監督と同じく、俳優、脚本、監督などの活動をする多才な人物です。
時間の違い
ソーとジェーン・フォスターの再会シーンを思わせる箇所では「3、4年ぶり?」と聞くジェーンに対してソーが「8年7ヶ月と6日だ」と応えています。
©MARVEL,Disney
二人の再会は2013年11月8日米国公開の「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」以来であり、「ラブ&サンダー」の2022年7月8日との日数差は3164日(8年8ヶ月)。MCUの時系列にかなり正確な期間となっています。
また、ジェーンとソーの時間感覚に5年の差があるのは、ジェーンがサノスによって5年間消えていたからで、ジェーンの体感時間は3、4年しか経っていない事を意味しています。
狼男
ゴアにさらわれた子どもたちはアスガーディアンばかりではありませんでした。それどころかその多くが別の種族であり、なかには狼男(ライカンスロープ)の少年もいました。
2022年のハロウィンスペシャルとして「ワーウルフ・バイ・ナイト」が配信されると報じられていますが、それに先んじてMCUに狼男が登場しました。
オムニポテンスシティ
ゴア討伐のために神々の協力が必要だとして向かった先はオムニポテンスシティ。予告ではオリンポスかと思われていましたが別の場所でした。
オムニポテンスシティもコミックにたびたび登場し、神々の交流と統治の場所となっています。MCUではゼウスがこの街のリーダー的存在として描かれており、ゼウスの源流であるギリシャ神話以外の様々な神がここで登場しています。
ソーのゴッドチーム
ソーは妥当ゴアのためのチームメイトとしていくつかの神々の名前をあげています。
そのうちのラーはエジプトの太陽神であり、ドラマ「ムーンナイト」に登場したエネアドのうち、劇中に登場しなかったメンバーのひとり。「ムーンナイト」にも「ラブ&サンダー」にも不在のラーはどこで何をしているのでしょう。
トゥマタウエンガはマオリの戦いの神で、コミックではハワイのクーという名で知られています。
ケツァルコアトルはアステカの羽毛の蛇と天空の神で、コミックではソーと組んで敵と戦いました。
その他オムニポテンスシティでは多数の神々の姿も登場しましたが、名前が紹介されるのはごくわずかであり、ブラックパンサーのマスターであるバステト もそこにいるだけのキャラクターでした。
映画のクレジットからはアルテミスやミネルバがいた事がわかりますが、誰がどれなのかは難しい所。その他、アステカの神、エルチェの神、マオリの女神、マヤの神、ジャデムライの神、ギリシャとエジプトの神々、そして死者の女神などがクレジットに記載されています。
そして2ndトレーラーのイースターエッグ記事 でも触れましたが、全裸にされたソーの背中にはロキへの愛が表現されています。
予告に登場していたセレスティアルズのようなキャラクター も何も言及される事はなく、ただのにぎやかしでした。
ソーとジェーンの思い出
ソーとジェーンの思い出がフラッシュバックするシーンは感情を揺さぶるシーンのひとつですが、これがいつ頃なのかを特定するのは困難を極めます。
ソーは時系列2015年の「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」にてトニーと彼女自慢の話題となり、その中で「ノーベル賞を取りそうだ」と語っています。その後ソーは作中で見た破滅の夢が気になるとして、ラストシーンではインフィニティ・ストーンを探しに宇宙へと旅立っています。
二人のすれ違いはソーがヒーローとして忙しいことに加えて、ジェーンが受賞した事がそれを加速させたと考えられますが、現在のところ「ラブ&サンダー」の中で受賞したのが正確にいつだったのかは発見出来ていません。
ソーはインフィニティ・ストーンを探すかたわら地球に戻りデートしていたと言う事になりそうです。
そして時系列2017年の「マイティ・ソー/バトルロイヤル」では既に別れたと話しています。ジェーンとソーの本作での「3、4年ぶり?」「8年ちょっと」という会話から別れることになったのもこの時期である事が推測されます。
また、デート中にソーが「ファーリー」と登録しているニック・フューリーからの電話で退席するシーンが描かれていますが、フューリーは「エイジ・オブ・ウルトロン」以降、「インフィニティ・ウォー」のラストで塵になるまでMCUには登場していません。ソーに出動要請が出るほどの事件がどんなものであるかは気になる所です。そしてフューリーは「いつまでがフューリーでいつからスクラルのタロスだったのか」が解決されておらず、「ファーリー」からの電話が本当にニック・フューリーであるかは不明です。
さらにこの電話自体がMCUの厄介事のひとつで、問題をはらんでいます。「バトルロイヤル」でロキと共に地球に戻ったソーはドクター・ストレンジと面会。その中では次のような会話をしています。
ソー:父の居場所を伝えるだけなら電話で済むだろ ストレンジ:だが君は携帯を持っていない ソー:ああ、持ってない。電話が駄目ならメールがあるだろ? ストレンジ:パソコンは持ってるのか? ソー:まさか!
というようなアスガルド人らしいやり取りでドクター・ストレンジにため息をつかせていました。
「バトルロイヤル」のときはアスガルド人らしさを強調するためにソーを地球のテクノロジーから遠ざけていたと考えられますが、その後うっかりソーが電話を持っていることにしてしまったと考えられます。
「エターナルズ」でキンゴが「ソーは子供のころ私の追っかけだったが、今や電話をしても無視だ」と話している事も考慮すると、ソーは映画「マイティ・ソー」で地球に来て以降、地球の携帯を手に入れキンゴと番号を交換するも、ジェーンと別れたのを期に電話をどこかへ捨ててその後ストレンジと話をしたと何とかこじつけて考えられるかもしれません。
シャドウレルム
ゴアのネクロソードはコミックからの変更点はほとんどありませんでしたが、ゴアがいたシャドウレルムは少し異なる設定になっています。
MCUのシャドウレルムは、光がすべての色から漂白された別の次元として説明されていました。コミックのシャドウレルムはヌルの代理人であるソウル・マスターズと呼ばれるクリーチャーが支配されている世界です。概念的にソウル・マスターズはMCUでゴアがネクロソードから生み出したクリーチャーとほぼ同じと言えます。
ゲート・オブ・エターニティ
2ndトレーラーのイースターエッグ記事 でも触れましたが、最終決戦となった場所はマーベルの強力なキャラクターたちの石像が並んでいます。
©MARVEL,Disney
リビング・トリビューナル、サノスの恋愛対象でありデッドプールの恋人でもあるデス、マルチバースの空間を司るインフィニティ、そしてコミックのインフィニティ・ウォーでサノスの計画をキャプテン・マーベルに忠告しに現れた時間を司るコズミックエンティティのイーオンが映されています(画像左からデス、イーオン、インフィニティ、ウォッチャー、リビング・トリビューナル)。
前回の記事ではインフィニティの正面に一対であるエターニティの像があるのではないかと指摘しましたが、エターニティは扉の奥に実体がいました。劇中ではセレスティアルのアリシェム・ザ・ジャッジのような顔の石像が崩れていたため、インフィニティの正面にはそれがあったのかもしれません。
マイティ・ソーの決め台詞
ジェーンとゴアの戦いの中、ゴアは「レディ・ソー」と呼び、それに対してジェーンは怒りをあわらにして次のように叫びます。
「第一に、私の名はマイティ・ソー!」「第二に、そうでなければジェーン・フォスター博士と呼びなさい!」「第三に、私のハンマーを喰らえ!」
1つ目はヒーローの後継者が女性だった場合に前任者の名前にレディをつけて呼ばれがちな事に対する怒りが表現されています。
2つ目は女性が博士号を取っても名前だけで呼ばれる風潮への怒り。これはドラマ「ワンダヴィジョン」4話においても、ジェーンの友人ダーシー・ルイスがS.W.O.R.D.の職員に「ミス・ルイス」と呼ばれた事にたいして「ルイス”博士”よ!」と同様の怒りをあらわにしていました。
「ラブ&サンダー」冒頭ではコーグがジェーン・フォスターと呼んでいるのに対し、エンディングのナレーションではジェーン・フォスター博士と改善されているのは興味深いところです。しかし女性が存在しないクロナン人に女性差別の概念があるのかどうかは議論の余地があります。
3つ目は怒りとは関係なく、作中の中盤でソーから教わった決め台詞をアレンジしたもの。「このハンマーを喰らえ」から「私のハンマーを喰らえ」と変更しています。
エンディングからクレジットシーン
エターニティと直面するエンディングシークエンスやミッドクレジット、ポストクレジットシーンについては、「エンディングとクレジットシーンの解説」 記事にて紹介しています。
コーグの旦那(嫁)となったドウェインとは、コーグ達クロナン人が岩人間である事と、レスラー時代のリングネームが「ザ・ロック」であるドウェイン・ジョンソンさんをかけているのでしょうか。
映画「ソー:ラブ&サンダー」は 2022年7月8日 より劇場公開中です。