ソニー・ピクチャーズ制作のSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)の映画「モービウス」のメガホンを取ったダニエル・エスピノーサ監督が、海外メディア Deadline とのインタビューの中で、本作がファンが期待したような映画にならなかった事について語りました。
「モービウス」の興行不振を個人的にどのように受け止めたかとの質問に対し、「委員会を通して映画を作るというのは、とても難しいことだと思います。結局、別の監督の方が適任だったかもしれないと感じました。」と監督は語りました。
少し前には同様のことを「マダム・ウェブ」の主演を務めたダコタ・ジョンソンさんが発言し、方方から批判を受けました。
こういった映画の決定は委員会によって下され、委員会で作られたアートはうまくいきません。映画は映画監督とその周りのアーティストのチームによって作られるべきです。数値やアルゴリズムに基づいてアートを作ることはできません。
スタジオと監督の意見が一致しているときは何も問題ありませんが、方向性が違った時に監督が自分の意見を曲げられるかどうかが向き不向きとなるのは事実と言えそうです。
2010年、スリラー映画「イージーマネー」が本国スウェーデンでヒットした後、ハリウッドに招かれた監督はデンゼル・ワシントンさんとライアン・レイノルズさんのアクションスリラー「セーフハウス」やカルトヒットのSFホラー映画「ライフ」など、興行収入としてはそこそこと評価される映画を制作、その後「モービウス」を制作し、世間から酷評される形となりました。
エスピノーサ監督はハリウッドで活動した期間について次のように述べています。
私はアメリカで12年間過ごしました。そして、自分がやっていることが、映画を作り始めた本当の理由から私を徐々に遠ざけていることに徐々に気付きました。だから、自分が映画を作る理由に立ち返る必要が本当にあったのです。
スウェーデンとチリの血を引くダニエル・エスピノーサ監督は現在ヨーロッパに戻り、ハリウッドのシステムから外れ、元の自由な映画製作に戻っています。
「モービウス」は、報道によれば7500万~8000万ドルの製作費に対して1億6750万ドルの収益を上げ、赤字は回避しましたが、ジャレッド・レトさん主演のフランチャイズとしては成立しない作品とされています。
しかし多くのファンが失望したのは興行収入などではなく、予告でスパイダーマンがほのめかされていたにも関わらず、ほとんど何も起こらなかった事でした。
当時、監督はこの予告もまったく関与していないとし、ソニーが用意したものだと説明していました。
また、マイケル・キートンさんが演じたバルチャーはもともと別の手段で登場する予定でしたが、これをソニーが急遽変更するようにアイデアを出してきたとも語っていました。もともと「モービウス」は「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」よりもかなり先に公開される予定であり、彼がドクター・ストレンジの呪文の影響を受けるはずはありませんでしたが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で映画の公開スケジュールが大幅に乱れた後、スタジオの思いつきで変更される事になったと主張していました。
監督は米国から帰国後、「自分自身についての物語を作る」方法を模索していたと語り、そこから制作した「マダム・ルナ」がタオルミーナ映画祭で上映。
「マダム・ルナ」は、悪名高い人身売買業者としての身分を隠しているエリトリア難民の物語。自由への道の途中でイタリアに留まることを余儀なくされた彼女は、自分が搾取した人々が経験したのと同じ苦難を経験します。
この原点回帰の後、ハリウッドの仕事に戻る可能性について質問された監督は「二度と大きなプロジェクトをやらないとは思いません。」と言います。
「でも、体制やシステムで仕事をしたい監督が求められるプロジェクトには、もう出ないと思います。例えば、『セーフハウス』をやったとき、デンゼル(ワシントン)にとって、それが私であり、私がやりたいことだということがとても重要だったし、私にとってもそれは重要だと思うんです。」