2013年から米ABCで放送が始まったドラマ「エージェント・オブ・シールド」のシーズン7が今年の夏に放送され、海外メディア Collider が本作を2020年最高のマーベル映像作品だったと評しました。MCU初のドラマとして制作されつつも、途中からディズニーによってうやむやにされてしまった作品ですが、紆余曲折ありつつも最長であり最高のマーベルドラマであったのは間違いありません。
エージェント・オブ・シールドの歩み
2012年に公開された映画「アベンジャーズ」でのニューヨーク決戦後から始まる「エージェント・オブ・シールド」は「アベンジャーズ」と同じジョス・ウェドン監督が手掛けたドラマで、マーベルやアメコミファンの期待が大きく、シーズン1の初回放送は1200万人もの視聴者を獲得しました。しかし、MCUの映画を制作していたマーベル・スタジオと、本ドラマを制作していたマーベル・テレビジョンは完全な別会社である事がこの後に大きく影響してきます。
シリーズは2013年~14年にかけて公開されるマーベル映画と結びつくことを示唆し、マーベルファンにとって「エージェント・オブ・シールド」は見ておくべきシリーズとなりました。しかし、シリーズは映画と足並みを合わせるためにスローな展開を続けた事もあり、シーズン1の終盤では視聴者数が500万人に減少しました。
続くシーズン2でも挽回できず、視聴者数は300万人まで落ち込みました。映画「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」以降はシリーズキャンセルの危機に瀕し、結果として映画作品とクロスオーバーする意味がなくなり、独立してストーリーが描かれるようになったときに、「エージェント・オブ・シールド」は逆に魅力を増していくことになりました。
その後、映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」を少しだけなぞりつつ独自の展開を始めた「エージェント・オブ・シールド」はインヒューマンズとクリーを中心に物語を進め、ゴーストライダーなども登場しました。
シーズン1から主要キャストにアジア人を加えたほか、以降のシーズンでも多様な人種が登場し、MCUに先駆けて多様性を表現していたのも特徴的でした。またフィッツとシモンズの恋模様を中心に、様々なキャラクターの愛憎劇も描き、長編ドラマならではのヒューマン・ドラマを描くことに成功しました。
ファイナルシーズンについて
マーベルファンの多くが望んだMCUとの再リンクは残念がらありませんでした。シーズン5ではサノスの地球侵攻について言及されていましたが、おそらくは異なるマルチバースへと分岐していると考えるのが妥当です。無理に考えるのであれば、「アベンジャーズ/エンドゲーム」でロキが逃げた世界の後が「エージェント・オブ・シールド」の世界かもしれません。
再リンクこそなかったものの、海外の大手レビューサイトロッテントマトでは批評家レビュー、視聴者レビューともに90%を超える高評価で、有終の美を飾りました。
2020年最高のマーベル作品、とされた本作ですが、そもそも作品数が少なかったのも事実。映画「ニューミュータンツ」は2020年最高のオープニング興行収入を記録しましたが、もともと3部作構成の作品であるはずの1作目で強制終了となったため、レビューはふるいませんでした。そしてHuluで展開されたドラマ「ヘルストローム」に関しても、シーズン2以降も計画されていたものがディズニーの事業再編によるマーベル・テレビジョンの解体をもって白紙となり、尻切れトンボ感が災いしてこちらも批評家レビューはさんざんでした。(視聴者レビューは概ね好評でした)
ちなみに「エージェント・オブ・シールド」は米国ではNetflixとの配信契約が先にあったようで、ファイナルシーズンを含めた配信が米Netflixで始まっている代わりに、米ディズニープラスでは配信されておらず、現地のマーベルファンからは嘆きの声が上がっているようです。
日本ではディズニープラスでシーズン1からシーズン6まで吹替版も含めて配信中。ファイナルシーズンの配信は発表されていません。
ソース:‘Agents of S.H.I.E.L.D.’: The Best Thing Marvel Released in 2020 Was the Show’s Final Season