謎が増え続けるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のドラマ「ワンダヴィジョン」は、これまでに公開されてきた映画シリーズと同様イースターエッグがたくさんある作品です。この記事ではそれらについて取り上げて行きたいと思います。今回はエピソード7「第4の壁を破って」に注目。
この記事にはネタバレを多く含んでいますので、未見の方はご注意ください。
7話
エピソードタイトル「第4の壁を破って」
トレーラーでワンダがインタビュー形式で語るシーンがありましたが、今回はそのシーンを含むエピソードでした。
Previously on WandaVision
以前に紹介したイントロ部分のナレーションのトーンがさらに下がっています。吹き替えでいう所の「前回までのワンダヴィジョンは」という部分ですが、吹き替え版はどのエピソードも差を感じられません。英語版ではワンダの精神状態のさらなる悪化が表れているかのようです。
again #wandavision pic.twitter.com/p0i2RSH2bL
— h (@tfasteves) February 19, 2021
新たな六角形
マーベル・スタジオのロゴの直後に新たな六角形が表れます。掛け布団とヴィジョンのものと思われる枕がそうですが、ワンダの枕はそうではありません。
©2021 MARVEL,Disney
WNDA
ワンダが朝食を用意するシーンではラジオ放送が流れています。しかしこれは吹き替え版には音声が入っていません。英語版ではラジオ放送のような音が流れており、日本語字幕をオンにすると内容がわかるようになっています。これは日本の吹き替え編集ミスの可能性があります。
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また、能力の制御が効かなくなっているのか、様々なアイテムが姿を変え、時代設定など逆行するケースが見られます。
ビタミンD牛乳
通常、牛乳にビタミンDはほとんど含まれていません。ビタミンDは骨の生成に不可欠な要素で、日本では馴染みが薄いですが、米国ではわりとビタミンD入の牛乳が流通しているようです。
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ただし、ここでいうDはDevilやDemonを表現している可能性もあります。
外界と遮断されているウェストビューではエネルギーから食料に至るまで自給自足が必要になりますが、我々視聴者はヘックス内で牧畜をやっている風景を見たことはありません。
そして牛乳を注ぐシーンでは、牛乳パックの側面が見え、子供が行方不明になっている事がわかります。これはアメリカで1980年代中盤から1990年代中盤にかけて実施されたプログラムで、これ自体はさほど不思議ではありませんが、ラジオからはタイミングよく奇妙なコメントが流れます。
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Snap
朝食は「Sugar Snaps」を摂るようです。Snapと言えばサノスの指パッチンでもあり、ワンダのトラウマがCMだけでなく現実にもにじみ出てきています。
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赤いボウル
本作において赤色は基本的によくない兆候です。本エピソードの結末を暗示しているかのようでした。
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122822 from オープニング
122822というのはスタン・リーの誕生日1922年12月28日を表していると考えられます。
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それとは別にソーシャルゲーム「Marvel Avengers Alliance」にてファンタスティック・フォー関連のイベント「The Pulse」でも使用されていたようです。「ワンダヴィジョン」のファンタスティック・フォーへの言及はとどまる所を知りません。
オープニングクリップはワンダで埋め尽くされており、ラストにヴィジョンが少しだけ入ってくる妙な表現になっています。
お見通し from オープニング
オープニング中に「お見通しだ」といメッセージが挿入されています。オープニングのラストにはワンダが制作したことが記されているにも関わらず、ワンダ宛のメッセージが含まれていることはとても奇妙です。
©2021 MARVEL,Disney
そして思い出してください。これまでシットコムのスタッフロールにワンダの名前はありませんでした。この7話で何かが変化しています。
モキュメンタリーとモダン・ファミリー
本エピソードは全体的にキャストがカメラに向かって話しかけるシーンが挿入されています。これはモキュメンタリーと呼ばれる手法で、フィクションをドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する表現手法です。擬似を意味する「モック」と、「ドキュメンタリー」を合成した用語であり、「モックメンタリー」「モック・ドキュメンタリー」ともいい、日本では和製英語の「フェイクドキュメンタリー」が用いられます。2000年代後半のモキュメンタリー・シットコムとしてモダン・ファミリーが有名でした。
再びWiiへ
冒頭でビリーとトミーがWiiで遊んでいると時代が逆向しテレビゲームですらなくなってUNOまで退化しましたが、無事にWiiまで戻ったようです。
©2021 MARVEL,Disney
前回はDDRで遊んでいた二人ですが、今回Wiiでは「スターフォックス ゼロ」(2016年)を遊んでいるようです。
ナダ ニエンテ
ワンダは子どもたちとの会話の中で、「何もかもが無意味に感じる」と話します。「ナダ」「ニエンテ」とはスペイン語で「何もない」「無」表すワードで、2000年代から日常会話に南米経由のスペイン語が入ってきている事を表現していると考えられます。
また、母親だからといって全能ではないことや、子供の意見を尊重する姿勢を見せるのも2010年代の思想的特徴を表しています。
ルイス博士の研究
ヴィジョンがマインド・ストーンのパワーを用いてダーシーの意識を回復させ、本名を聞いたときに、「研究を聞いたことがある」と言います。
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この後のシーンではヴィジョンがいつ生まれ、どのように死んだかを教えてもらうわけですが、研究を耳にしたタイミングがわかりません。ヴィジョンはウェストビューに来る以前の記憶がほとんどありません。ダーシーの本がウェストビューの図書館にでもあるのでしょうか。
また、ダーシーと車に乗り込んですぐにヴィジョンは「なぜピエトロは別人に?」と吹替版で尋ねます。ピエトロが別人という質問は「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」のピエトロを知っていないと成立しません。そしてこのヴィジョンにはその記憶がありません。英語では「ピエトロは詐欺師?」、日本語字幕では「ピエトロの正体は?」となっており、吹き替えの脚本ミスだと考えられます。
ネクサスのCM
「世界から取り残された気分?」「それとも一人になりたい?」と呼びかけ、抗うつ剤の「ネクサス」のCMが入ります。「あなたを現実につなぎとめる抗うつ剤」と紹介され、「現実を選択可能」としながらも、副作用にも言及されています。実際に挙げられているのは以下の四つの副作用です。
・Feeling your feelings 感覚や感情をはっきり知覚してしまうこと
・Confronting your truth 真実に直面してしまうこと
・Seizing your destiny 運命に直面してしまうこと
・More depression さらなるうつ状態
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本エピソードのワンダを象徴しているかのような副作用で、「ネクサスは、ドクターが人生を次に進められると診断しない限りは服用するべきではない」という注意も伝えられます。
主成分とされる10.3%の「ネクサルプロモサイド」は現実にある成分ではないようです。ラテン語の接尾辞「-cide」は、殺すものを表し、全体として解釈すると、成分の名前は「ネクサスが殺害を促進する」という意味かもしれません。
ちなみにネクサスはMCUにおいて以前に登場したワードで、映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」にて、ノルウェーのオスロに位置するインターネットの世界的な中継地点の名前でした。「NEXUS Internet Hub」で、トニー・スタークは核の発射コードをウルトロンから守っていたのが、ヴィジョンの前身であるジャーヴィスであったという事実を突き止めた場所です。
その他コミックでもマルチバースを繋ぐゲートの名称としてネクサスが使われています。これはマーベル・コミックだけではなく、もともとネクサスという英単語が「つながり、結びつき、結合」を意味しているからで、様々なゲームや漫画、映画といった創作物と使われる言葉でもあります。
これまでCMはインフィニティ・ストーンを表している可能性が言及されていましたが、今回のネクサスはカプセルに入っている事からオーブ、すなわちパワー・ストーンを表しているのかもしれません。かなりこじつけ論ではありますが。
覚醒するモニカ
コミックでは電磁波へと変身する能力を持つヒーローであるモニカ。スペクトラムやフォトンという名で活動するモニカですが、MCUのモニカも電磁波に関係するような能力の片鱗を見せました。
©2021 MARVEL,Disney
また、今回の衣装も原作をオマージュしたデザインになっています。
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ダーシーはリケジョ?
ダーシーは自らをリケジョと言いますが、このブログでも度々取り上げている通り、ソーシリーズに登場していたダーシーは政治科学専攻の文系学生でした。
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MCU非公式の小説でダーシーが天文学へ転向する話もあるようですが、今現在どういう理由で天文学へと変わったのかは言及されていません。以前のエピソードで見せた天才的ハッキング技術も腑に落ちず、もしかするとソーに登場していたダーシー・ルイス本人ではない可能性もあるのかもしれません。
配達員
配達員が正面からはっきりと映る瞬間に、帽子にうさぎのマークがあることがわかります。
©2021 MARVEL,Disney
アグネスのうさぎ、セニョール・スクラッチーと関係がある可能性があります。
アグネスの本名
アグネスがアガサ・ハークネスである事を名乗ります。
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アグネスが魔法をかけると紫色のオーラで表現されました。パワー・ストーンと同じ色合いですが、パワーソースは不明です。今回のネクサスのCMとの関連性もわかりません。
また、前述の魔導書のオーラとは色が違うため、本には別の存在のパワーが宿っている事が考えられます。
その後、音楽が流れ黒幕がアガサ・ハークネスであることが知らされます。
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マジックショーでのトラブルも、ハーブの怪しげな態度も、ピエトロも、ヴィジョンをエリス通りに誘導したのも、スパーキーを殺したのもアガサの仕業だと明かされました。
この直後で7話は終了し、アガサの動機などは次回以降に持ち越されます。この時点でアガサが黒幕であるという断定が出来ません。
念の為、コミックのアガサ・ハークネスは中立的ポジションのキャラクターであり、ワンダの魔術の師匠でもある人物です。暴走したワンダに殺されながらも弟子であるワンダを心配し、たびたびアストラル体の状態で助言など手助けをする情の深いキャラクターでした。またファンタスティック・フォーのリーダー、リード・リチャーズとスーザンとの息子フランクリンの乳母を務めた事もあり、悪役というわけではありませんでした。
しかし子犬を殺してしまったこのアガサは立派な悪役と言えるでしょう。スパーキーは実際の犬ではなく、魔力で生み出された魔法の塊であったことを願うばかりです。
ポストクレジット
MCUとして久しぶりのポストクレジットシーンがありました。
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ワンダの家が2800番地なので2804だと2軒となりの家となるはずです。アグネスの家はすぐ隣の家だと思っていましたが違ったのでしょうか。モニカが地下室への入り口を開けると、地下は紫のオーラを放つ植物の根が張り巡らされていました。アグネスの家なのか、あるいはアグネスの隣の家までも侵食しているという事なのでしょうか。
そしてモニカの背後にピエトロが近寄り、「詮索好きか」と声をかけた所で終了します。英語では「snooper’s gonna snoop」となっており、日本語字幕では「また詮索か」となっています。ピエトロとモニカは初対面のはずなので、「また」という表現はそぐわないものになっています。ここは吹替版のほうが元の英語と物語の流れにあったものになっています。
しかしピエトロの正体がモニカの知り合いである可能性もあるのかもしれません。翻訳作業がこの先の展開も分かった上で行われているのであれば、「また」という表現をうっかり使ってしまった可能性もあるでしょう。
以上が気づいたポイントです。他にも何かあれば追記するかもしれません。