配信が始まったにも関わらず謎が多いMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のドラマ「ワンダヴィジョン」は、これまでに公開されてきた映画シリーズと同様イースターエッグがたくさんある作品です。この記事ではそれらについて取り上げて行きたいと思います。
この記事にはネタバレを多く含んでいますので、未見の方はご注意ください。
3話
エピソードタイトル「カラー放送」
イースターエッグという程ではありませんが、1話、2話と違って配信と同時にエピソードタイトルが公開されました。ちなみに1週間遅れで公開された1話、2話のタイトルはネタバレを示唆するようなタイトルではありませんでした。今後タイトルがどのように扱われるのかは不明です。
新たなオープニング
今回は1970年代に人気を博したシットコム「ゆかいなブレディー家」を模したようなオープニングになっています。しかし今回も登場する六角形。2話のオープニングで登場したときは、六芒星やインフィニティ・ストーンを表現しているだろうというお話もしましたが、あらたに補足しておきます。
©2021 MARVEL
六角形とは英語でヘックスといい、コミックのワンダの最初の能力であるヘックスパワーを表現している可能性があります。ヘックスパワーは確率を操作し、近くにいる人を8割ほどの確率で不幸に陥れるパワーとして描かれていました。ワンダが現実改変能力を手に入れるのは、もっと後のことです。
ヘックスをさらに日本語に直すと、16進数という意味もあります。16進数は2進数であるコンピュータが扱う情報を人にわかりやすく伝えるために用いられることが多いです。もともとAIだったヴィジョンの事をも表していると考えられます。
ちなみに前回のオープニングと違い、今回は歌詞がありました。
英語版の歌詞は以下のとおりです。
WandaVision
We got something cooking
And it’s looking good
We’ve got something cooking
And who knew we could
All great expectations
Lead to complications
But it’s groovy and fun
It’s me and it’s you
Together, one plus one
Is more than two
WandaVision
WandaVision
Some sudden surprises
Come in all shapes and sizes
But it’s rainbows and sun
It’s you and it’s me
Together, one plus one is family
料理と赤ちゃんを重ね合わせて、3話のメインとなる妊娠と出産についてほのめかす歌詞になっています。吹替版は出だしから「二人だけが知っているハッピーニュース 二人きりで待っているラブニュース」と、より直接的に表現しています。
オープニング中の映像は実際に起きた事なのでしょうか?
新しい家
今回も2800番地はそのままに、家が新しくなります。
1話の外観(左)と玄関(右)
2話の外観(左)と玄関(右)
そして3話の外観(左)と玄関(右)
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外装に大きな変化は見られませんが、それでも玄関ドアが変化しているのは一目瞭然です。内装はエピソードごとに大きく変化しています。時代設定が急激に進むのですが、ワンダやヴィジョン、ウェストビューの人たちがそれについて話題にすることはありません。
しかし次の項目でわかるように、3話は2話の翌日の話でした。
一晩で妊娠から出産へ
2話のラストでワンダのお腹が大きくなり、それからしばらく後の話かと思いきや、ヴィジョンの話しぶりから12時間しか経っていないことがわかります。
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明らかに異常な妊娠ですが、この町の異常さ程ではありません。この奇妙な時間の流れは何を意味しているのでしょうか。
ちなみにヴィジョンが診察を終え、バミューダに旅行に行くというニールスン医師に対して、町のみんなには内緒にしてほしいと伝えるのですが、この後オープニングシーンにあるベビー用品の買い出しに向かったのでしょうか。特にお腹を隠しているようには見えませんでした。
ハーブの様子がおかしい?
お隣さんのハーブが一生懸命に垣根を切っています。ちょっとした恐怖を感じるシーンです。また、予告動画でもわかっていましたが、背景の妙なハリボテ感は一体何を表しているのでしょうか。
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このあとヴィジョンの注意に対して、ありがとうと答えたハーブは笑顔でヴィジョンを見つめ続けながら切り続けます。
ビリーかトミーか
ワンダとヴィジョンは生まれてくる子の名前で軽く揉めます。ヴィジョンはウィリアム・シェイクスピアにちなんでビリーが良いと言い、ワンダはアメリカ人らしいトミーが良いようです。
このシーンでヴィジョンは「この世は舞台 人は皆 役者だ」というシェイクスピアの言葉を引用していますが、このウェストビューが作り物だということを示唆していると考えられます。
これはコミックにも登場する双子の息子、スピードことトーマス・“トミー”・シェパードとウィッカンことウィリアム・“ビリー”・カプランと同じ名前です。ゆくゆくはヤングアベンジャーズとしてデビューするのでしょうか?
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また、このシーンではドクター・ストレンジとの繋がりも確認出来ます。
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不安に思うヴィジョン
このあと、おしめを替える練習をして赤ちゃんを迎え入れる準備をするヴィジョンですが、陣痛を引き金にワンダのパワーが制御できなくなったようで停電になってしまいます。あたりを確認して帰ってきたヴィジョンは、1話のハート夫妻以降、おかしいことに気づき始めます。
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しかし、ヴィジョンの不安は何者かによってなかった事にされてしまいます。2話ラストの養蜂家については明確にワンダが対処していましたが、今回はまったくそうではありませんでした。まるで映像の編集ミスかのように時間が少し戻り、世界に対する不安は赤ちゃんが生まれる事への不安へと書き換えられてしまいました。
ドッティと旦那
2話で存在感を見せたドッティですが、今回はちょっとだけの登場。「このイヤリング、太って見える?」と旦那さんに尋ね、直後に停電が起きるおかげで旦那さんは神様に感謝することになります。この停電は直前のワンダの力の暴走が原因のようにも見え、停電の際は2話の冒頭やラストにあった雷のような音が聞こえます。
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後ろの電気スタンドはワンダの双子を象徴しているのでしょうか。旦那さんのフィルが読んでいる新聞が気になるところで、トップニュースには「TWO FIRE HYD… ADDED ON MA…」となっています。
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HYDの次の文字は半分しか見えておらず、Rのようにも見えますがHYDRとくればヒドラなのでしょうか?
ヒドラ・ソーク
やはり今回も入ってくるコマーシャル。1話、2話の男性目線のCMとは違い、3話のCMは女性主体のものになっていました。1970年代のアメリカといえばウーマンリブの時代。政治や文化など、様々な分野にフェミニズムが進出し始めた時代ですが、女性が家事労働を押し付けられている映像はまだまだ70年代のCMという感じです。
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今回の商品は入浴剤のヒドラ・ソーク。「すべてを水に流し、自分だけの世界に浸れます」とは、過去に多くを失ってきたワンダへの言葉でしょうか。英語版では「Escape the world (世界から逃げ出して)」というフレーズも入っています。字幕では「家にいながら 安らぎのひと時を」となっている箇所は、英語では「When you wanna get away, but you don’t wanna go anywhere. (逃げ出したいけれど、どこにも行きたくない時に)」となっています。とにかく現実逃避を促している商品となっています。
実はこの「ヒドラの石鹸」、ヒドラ・ソークと同一のものではありませんが、以前にある作品に登場しています。それがこちら。
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そう、フィル・コールソンです。こちらドラマ「エージェント・オブ・シールド」シーズン4 第17話「反対の世界」で登場しました。仮想世界「フレームワーク」に取り込まれてしまったS.H.I.E.L.D.のエージェントたちはヒドラの石鹸によって洗脳されていました。ちなみにですが、フレームワーク内にいたアグネスはマダム・ヒドラでした。
出産の時
ついに出産直前となり、ヴィジョンは大急ぎでニールスン医師の元へ走ります。そう、まるでピエトロのような残像を残しつつ。
ひとりになったワンダが産気づいていると、魔法が暴走したのか壁に描いたコウノトリの絵が実体化してしまいます。そこへジェラルディン(モニカ・ランボー)があらわれ、バケツを貸して欲しいといい、焦ったワンダはコウノトリを消そうとしますがうまくいきません。コントロールが上手くいかないのか、あるいは第三者の仕業なのかは不明です。
ジェラルディンはバイト先の上司ハドックスの話で盛り上がっていますが、これはS.W.O.R.D.の上司なのでしょうか?
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結局、ジェラルディンに妊娠がばれてしまい、そのまま出産することになりました。男の子が生まれたところにヴィジョンとニールスンが到着し、赤ちゃんを抱き上げたヴィジョンはワンダの意志を尊重し、「トミー」と呼びかけます。しかしワンダは再び苦しみだし、もう一人の男の子「ビリー」を出産するのでした。
医者の不可解な言動
せっかく連れてきたニールスンですが、出産は終わっていたため特にすることはありませんでした。ヴィジョンがお礼をいいつつ玄関まで送っていった先で「ご旅行楽しんできてください」と言うと、「旅行はやめとくよ。このちっぽけな町から逃げ出すことなんて無理なんだよ」と言って去っていきます。
やはり町の住民は何者かに閉じ込められていると考えていいのでしょうか。
ジェラルディンとウェストビューの住人
去っていったニールスンを不審に思いながら家に戻ろうとするヴィジョンの視界に、ひそひそ話をするアグネスとハーブが入ってきました。ワンダの妊娠と、ジェラルディンについて話しているようです。
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アグネスとハーブによると、ジェラルディンは家族も家も持たない新顔だと言い、怪しんでいました。ハーブは「彼女がこの街に来た理由は…だって俺たちは皆…」と繰り返し、その先を言おうとしません。アグネスがこれを制止し、ジョークでこの場を切り抜けますが、これまでのように観客の笑い声は入りません。シットコムの世界から、急に戻されたような印象を受けます。結局ハーブもそのまま真相に触れること無く去ってしまい、ヴィジョンは気になりつつも家に入ります。
このシーンで、ワンダとヴィジョン、ジェラルディンことモニカ(とS.W.O.R.D.)、そしてウェストビューの住人と三勢力になっていることが分かります。怪しげに思えたドッティも住人サイドで一丸となっているのでしょうか?
その頃家では
双子が生まれたことでワンダはふとピエトロの名を口にします。すると、ジェラルディンはピエトロについてこれまでに見せた事のない深刻な顔で「ウルトロンに殺された。そうでしょ?」とワンダに言うのでした。ワンダがジェラルディンに「何て言った?」と聞き返すと、ジェラルディンは元の明るいキャラクターに戻り、「あなたは強いね」とひとつ前のセリフを繰り返します。ジェラルディンもまた、自身のコントロールが出来ないのか、あるいは何か秘密を守るための演技なのか、どちらとも取れる印象を受けます。
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ワンダは引き下がること無く、「違う、ピエトロのことよ」と迫ります。ワンダは話を逸らそうとするジェラルディンに立ち去るよう告げた時、ジェラルディンのネックレスに目を留めます。そのネックレスはS.W.O.R.D.のもので、ネックスレスとジェラルディンの正体について問い詰めて行きます。
その後、ワンダの表情が変わり、ジェラルディンをウェストビューの外まで弾き飛ばしてしまいます。家に戻ったヴィジョンはワンダにジェラルディンの行方を聞きますが、ワンダは「もう帰ったわ、急用でね」と言うだけ。このタイミングで画面両脇の黒帯が取り除かれ、画面比率が現代と同じ16:9のサイズになっていきます。
そして映し出された場所はトレーラーでも登場していた「ウエストビュー」と書かれた看板が立つ土地。上空からはじき出されたジェラルディンは、ワンダがスーパーパワーを使う際に出す赤い光をまとっているため、ワンダに飛ばされたと考えていいでしょう。
すぐ近くには仮設のキャンプのようなものがあり、ジェラルディンのところに銃で武装した人間が集まってきます。
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そして、照明器材の向こう側にはもやもやとしたバリアのようなものが張られており、ジェラルディンもこの障壁から弾き出されました。障壁といっても物理的な壁としては機能していない事がトレーラーで明かされています。少なくとも外から内へは。
いまのところS.W.O.R.D.はMCUにて明確に説明されていない状態で、ワンダがなぜS.W.O.R.D.を拒絶するのかはっきりとしません。今回もヴィランは登場しませんでした。一番イヤなパターンですが、ワンダがヴィランになる物語を描いているのでしょうか。
ミスター・ドクター ※ 2021年1月27日 追記
冒頭の診察シーンでニールスン医師の帰り際に、「新米パパは神経質になるものだ」と言われた際にヴィジョンは「僕は鋼の神経を持つので」と返します。ここを英語音声、もしくは英語字幕で見てみるとニールスンの事をミスター・ドクターと呼んでいる事がわかります。
これは映画「ドクター・ストレンジ」の作中にて、カエシリウスがストレンジを呼称するときに使った言葉です。「ワンダヴィジョン」は現在製作中の「ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス」と直接繋がるとされているだけに、ストレンジ関連の小ネタは今後のエピソードでも見られるかもしれません。
以上が気づいたポイントです。他にも何かあれば追記するかもしれません。