2024年10月31日配信のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のドラマ「アガサ:オール・アロング」エピソード8「Follow Me My Friend. To Glory at The End(邦題:続け友よ 栄光の地へと)」のイースターエッグを中心に原作設定や今後の予想、考察などをご紹介。
※この先はシリーズのネタバレ、および今後の物語のネタバレの可能性が含まれています。ネタバレが嫌な方はご遠慮ください。
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レディ・デス
8話冒頭は5話で亡くなったアリスのシーンから開始。リオ・ヴィダルのデスとしての仕事が伺えるシーンとなっています。ビリーとアガサが外でやり取りしてる間にリオの姿がなかったのは仕事中だったからと言えそうです。
アリスはまだ現世に未練がある様子を見せつつもリオの言葉に納得し、この世を去る決意をしてあの世への扉をくぐっていきました。リオは火の試練の最中に「死体が欲しい」としていましたが、魔力を奪われて老人となったようなアリスはその場に捨て置かれ、魂と考えられる部分のアリスがあの世へと旅立っていきました。
もしもここで食い下がればエヴァノラ・ハークネスのようにゴーストとなってしまうのでしょうか?デスとゴーストが共存する世界観はなかなか不思議なものです。デスがエヴァノラを正しくあの世に連れて行っていれば、5話でエヴァノラがアガサを襲った時に割って入る必要もありませんでした。つまり自身の職務怠慢が生んだ自業自得と言える展開でした。そうでないとすると、MCUのゴーストはデスの制御を越える何らかの能力が死亡した側にあるのかもしれません。
MCUでは死後の世界として「ブラックパンサー」のアンセストラルプレーン(祖先の平原)、「ムーンナイト」の冥界、「ソー:ラブ&サンダー」のヴァルハラなどが映像化されてきました。アリスがどこへ向かったかは言及されていませんし、レディ・デスがどの「あの世」にもアクセス出来るのかも不明、今後の描写に期待したい所です。
自然のバランスを乱す存在
レディ・デスはビリーの事を「生と死のバランスを崩している」と指摘。生と死を司る存在として、自力で死から逃れたビリーの事を看過出来ないようです。
一方でデスは「特別扱いを受けたのはアガサだけだ」とも。しかしアガサはそれを「ただ奪っていっただけだ」と否定し、二人の感情は相容れません。
デスの狙いはビリーを正しく死なせる事。しかし、アガサはデスにそれが出来ないと気づきます。ビリーが死ねばまた新しい身体を見つけて生き返るとし、さらにトミーを生き返らせる事も出来るとまで話が進みます。これは単に双子の強力な絆によるものなのか、はたまた誰でも生き返らせる事が出来るのかはこの時点で不明です。
アガサはビリーが転生しないよう、自ら投降させる必要があるとし、そうさせる代わりに自分から手を引くように取引を持ちかけました。
緑の魔法
グリーンウィッチの緑の魔法は「命の循環を司る魔法。育み、やがて朽ちるまで」とジェンが説明しました。MCUのレディ・デスは単に死をもたらすだけでなく、新たな生命の創造にも関与しているという事のようです。
MCUで忘れてはならない緑の魔法使いといえば、もうひとり、ロキがいます。いまや時の王座に座ったゴッド・ロキはやはり緑色の魔法を操り、時の枝が自然に朽ちるまで守り続ける存在となっています。
ジェンの呪い
魔女の道を一周して元の位置に戻ってきたアガサ、ビリー、ジェンだけになってしまった魔女団。行き場を失い、ビリーが敬意を捨てて靴を履いた所で最後の試練の部屋へ。
ちなみに7話の通称「塔の試練」が風の試練だとショーランナーが明かしています。(from Deadline )最後の試練が土の試練で、火水土風が揃った事に。5話が「大地の力 目覚めさせよ」のタイトルであるにも関わらず土の試練ではなかった事は目を瞑る必要があります。英語では「Darkest hour, wake thy power」であり、翻訳のエラーと言える問題です。
部屋は近未来的な死体安置所と言った感じで、3人がジッパーを開けて袋から出てくる様子は死者蘇生をイメージさせる演出になっています。
試練が始まり、天井のタイマーが進んでいく中で、100年前にジェンの力が奪われたのは、実はアガサの仕業だった事が判明。残りの尺の事を考えると、ボストンで何があったのかを回顧する余裕はほとんどありませんでした。ゆえにこの展開は伏線をさらっと回収してしまうので見ていて有り難いものでしたが、その代償として、3話で浸水が始まる中、アガサは自分でジェンの力を奪っておいて「力を奪えても知識は奪えない」を励ましていたのは中々闇深いシーンとなりました。それもアガサ・ハークネスという闇を抱えたキャラだからこそ成立していると言えそうです。
解放の魔法で呪いが解けたジェンはウィッチズロードでの目的を失った事で、道からはじき出されました。目的がなかったシャロン・デイヴィスは最初から弾いてくれれば良かったのにとも思う場面でもありました。
トミーの器
アガサがビリーの中に眠るトミーの記憶を探求。「ワンダヴィジョン」のラストを振り返っています。
ワンダとヴィジョンの声が響く中で、ビリーはトミーの声が聞こえません。これに対してアガサは「記憶も感情も留めてはおけない」と自身が息子のニコラスを失った経験からのアドバイスを提供。
そしてビリーはプールで溺死しそうな少年を見つけ、それがトミーの器となった事をほのめかし、部屋から消えてしまいました。トミーの転生が成功した事を示しているのでしょう。
器に選ばれた少年は「孤独な子」と説明されています。
コミックのトミーはニュージャージー州スプリングフィールドで生まれ育ったトーマス・”トミー”・シェパードとして転生。フランクとメアリー・シェパードの一人息子で、両親は彼がまだ幼い頃に離婚、トミーは人生の大半を少年院で過ごしました。
トミーは「偶然」自分の能力を使って高校を蒸発させてしまったため、裁判所の命令によりロボットスーツやパワーダンピング収容室などの高度な攻撃・防御技術を備えた高出力施設に投獄。ヤングアベンジャーズが彼を解放するまで、トミーは何ヶ月も監禁され、生きた武器にするためのテストや実験が行われていました。
試練の終わり
ジェンとビリーが願いを叶えて消えた事で、部屋にひとり取り残されたアガサ・ハークネス。
ブローチに残されていたニコラスのものと思われる遺髪を取り出すと、そこに種を発見。試練のタイムリミットが迫る中、アガサはジェンがこの部屋の電灯が植物育成灯だと言っていたことを思い出し、涙を水代わりにして、種をビリーが消える時にできたひび割れに埋めて芽吹かせました。
一般的にタンポポは希望、強さ、回復力を象徴します。また、悲しみや喪失に対処する癒しの旅と関連付けられることもよくあります。
アガサはバラッドの歌詞のとおりに「友」 を「栄光の地へと」 導き、死から生命を始める緑の魔法に則った事で無事にクリアとなりました。
ウィッチズロードの終着点
アガサが扉を抜けると、そこはアガサの家の庭。「ワンダヴィジョン」にも登場した地下室への入口と繋がっていました。試練の部屋に入った際に「うちの地下室?」と語っていたとおりとなっています。つまり、2話で道への扉を開けた時の部屋が試練の部屋になっていたと考えられそうです。
最後に待ち受けていたのはレディ・デス。しかし、アガサは旅を終えたにも関わらず魔力が戻っていません。旅の仲間が使っていた呪文を駆使しながら、デスに抵抗。そしてリリアの「彼女が”臆病者”と言ったら伏せて」という予言に助けられはしましたが、その力の差は歴然としていました。7話の記事 でも指摘したようにリリアは能力でこの時間を視ることは出来ていないはずですが、彼女の占い師としての才能が成した技なのでしょうか。
そしてアガサのピンチに現れたのはビリー・マキシモフ。「ワンダヴィジョン」のハロウィンコスプレ回をブラッシュアップした、コミックのヴィジュアルにかなり近いウィッカンの姿で登場しました。しかし、ビリーの魔力を分け与え、アガサが力を取り戻してもレディ・デスには及びません。
かなわないと判断したアガサはデスに約束通り自分を連れて行くように告げました。しかし、ビリーは自分も連れて行けとアガサをかばいます。ビリーが同情してしまった事で、アガサとデスの当初の約束通り、投降の条件に当てはまることに。
ビリーを差し出したアガサは、アザレアを植えて庭をもとに戻すように忠告。アザレアとは西洋ツツジの事で、花言葉には「恋の喜び」、特に白い場合は「あなたに愛されて幸せ」と言った意味がある一方、誤って口にしてしまった場合は、その毒性によって生命に危険をもたらす重篤な症状が現れることがあります。アガサとレディ・デスの関係にうってつけの花と言えるでしょう。
去っていこうとしたアガサでしたがビリーに念話で呼び止められ、ニコラスの名前を出されて再びビリーを息子と重ねてしまったのか、デスと死の口づけを交わして身代わりとなるのでした。
アガサの亡骸にはすぐに植物が覆い隠すかのように生い茂り、消え去ってしまいます。それは花、特に紫色の花で覆われています。スミレとラベンダーのような紫色の花は、LGBTQ+ コミュニティ内では長い間同性愛と関連付けられてきました。スミレは「最も古いクィアのシンボルの1つ」と考えられています。
デスはアガサが見抜いていたようにここでビリーを殺しても見失うだけなので手出しをする事はなく、立ち去るようにだけ告げました。ビリーはアガサのブローチを拾い上げ、ワンダがウェストビューを去った時のように深くフードを被り直して街からさりました。
ウィッチズロードの真実
ビリーが自宅に戻ると両親が泣いてお出迎え。24時間ほど行方不明だった事が明かされます。アガサの自宅に侵入後、拘束されたビリーはアガサ宅で一晩過ごし、その後魔女団のメンバーをスカウトして、夕刻に扉を開ける儀式を行いました。その後、旅を終えてデスとの決着を迎えた頃はまた明け方になっており、ウィッチズロードでの出来事はほんの数時間だった事が伺えます。
自室に入ったビリーはローナ・ウーのコンサートが「一夜限り」であった事と、魔女団の旅が一夜の出来事だった事を重ねた事をきっかけに、「オズの魔法使い」の緑の魔女の人形、最初の試練の家にそっくりな絵画、ウィジャボード、靴のオブジェなど様々なウィッチズロードの要素が部屋の中にある事に気づきます。
そしてこれまでの会話のフラッシュバックなども差し込まれ、ウィッチズロードはビリーが母ワンダを同じように無意識の現実改変能力によって作り出したものである事をほのめかして、8話は幕を下ろします。
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