ドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」最終回に向けてシャロン・カーターの現状まとめ ─ 彼女は闇落ちしてしまったのか?

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現在配信中のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で約5年ぶりに登場したシャロン・カーター。そんなシャロンは最後にみた姿とは大きく異る人物として再登場し、視聴者に衝撃を与えました。本記事では今作で謎の多いシャロンの現状を紐解いて行きます。

ドラマ以前のシャロン

まずはこれまでのシャロンの足跡です。

2014年公開の映画「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」でデビューしたシャロンは、S.H.I.E.L.D.のエージェントとして登場し、その素性を隠してスティーブ・ロジャースをサポートしていました。物語のラストでは果敢にヒドラに立ち向かう様子が描かれました。

2016年の映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」ではS.H.I.E.L.D.の崩壊以降、CIAのエージェントとして働いている事が分かりました。本作では姓がカーターである事が明かされ、スティーブと恋仲だったペギー・カーターの姪孫だった事が判明します。この作品の中でスティーブの逃亡を手助けした事が今作でのシャロンに大きく影響しています。

なお、サノスによって消えていたことがエンドゲームの1シーンからわかっています。

©2019 MARVEL,Disney

ドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」のシャロン

久々に登場したシャロンはマドリプールにいました。ハイタウンに居を構え、多くの部下らしき人間を従えている様は逃亡中の人間には見えません。美術品を盗んで売るという事を生業としている様子が語られます。

しかしどういうわけかロータウンでのシーンが度々見受けられます。本作の初登場の際もロータウンの酒場でした。

シャロンはヴィランなのか?

シャロンがヴィランになってしまった、闇落ちした、パワーブローカーとはシャロンでは?という声はネット上でもよく見かけます。実際に美術品を盗んでいるようですし、追ってきた賞金稼ぎを殺すシーンもあり、ペギー・カーターを尊敬していた昔のようなクリーンな感じはありません。

シャロンの目的

まずはじめに抑えるべきポイントはシャロンはなぜマドリプールにいるのか、という事です。これは劇中でも言及されていて、「マドリプールは他国に犯罪者を引き渡さない」からです。つまり、米国政府に追われるシャロンにとってマドリプールは安全なのです。

次に、生業の美術品泥棒について考えてみます。元S.H.I.E.L.D.のエージェントであるシャロンからすれば、美術館に入り盗んでくる事は造作もない事かもしれません。しかし逮捕を嫌ってマドリプールに来たのに、国外へ盗みに出かけるのはなんともおかしな話です。考えられるのは部下に盗みに行かせるか、あるいは盗品としてマドリプールに入ってきた美術品をあらためて盗むかです。特に後者は元の所有者にシャロンの存在がバレることはないので、シャロンにとってとてもセーフティです。これであればロータウンに出向いている事も辻褄が合うように思えます。

シャロンがマドリプールでどういう目標をもっていたかは語られていません。しかし、サムたちと再会することで「政府から恩赦を得たい」という欲求は強く出てきたようです。そして実際にサムたちに協力するシーンは多く、別れ際にも恩赦について念を押します。

©2021 MARVEL,Disney

シャロンはパワーブローカーなのか?

パワーブローカーは新たな超人血清を使って何らかのビジネスを企んでいました。そして血清を盗んだカーリ達フラッグスマッシャーズを追っていました。2話のラスト、スロバキアの首都ブラチスラバの空港でパワーブローカーの追手とフラッグスマッシャーズが接触して以降、劇中で直接の接触はありません。

血清を取り返せなかったパワーブローカーにとって、血清を作ることができるネイゲル博士は最重要の人物です。そもそも血清が盗まれていなくても、博士は金の卵をうむニワトリです。博士に危険が及ぶ行為は絶対に避けなくてはなりません。

一方でシャロンはシビル・ウォーの関係者でした。シビル・ウォーで描かれた範囲ではシャロンはジモの目的を知る由はありませんでしたが、ジモが危険人物であることは知っています。そんなジモを博士の所へ連れて行くのはリスクが大きすぎると言えます。

また、血清探しの第一歩としてたずねた故買屋のセルビーを考えてみましょう。はじめに酒場の主人に対してジモが「セルビーに会いに来た」というシーンで初めてシャロンが登場します。シャロンはセルビーの名前を聞くとフードを深くかぶり直しどこかへ消えていきます。そして、サムがスマイリングタイガーだと偽って面会しに行った結果セルビーは殺されてしまいます。

ここのシーケンスにおいて、シャロン=パワーブローカーであれば、セルビーに対して面会しないように仕向ける時間は充分にあったように思えます。しかし面会は行われる事になりました。そしてセルビーは面会中に何者かに殺害されてしまいます。口封じのためにシャロンがセルビーを殺したのであれば、シャロン=パワーブローカーと考えるのはおかしくありません。しかし実際には口封じというより、サムを助けるためにセルビーを撃っています。セルビーは口を割りそうで撃たれたのではなく、サムを殺そうとして撃たれました。そして博士の元へ案内したのは結局シャロンであり、博士の事を秘密にしておきたいはずのパワーブローカーと真逆の事をしています。

その場を逃走したサムたちにかかる追手を始末し、ハイタウンの家にかくまったのもシャロンです。シャロン=パワーブローカーだと仮定すると、セルビーを自ら(あるいは部下に指示して)殺害し、サムたちをセルビー殺害の容疑者に仕立てあげ、その後追手をけしかけておいてその追手を自ら始末し、自宅に招くというなかなかの自作自演をやっている事になります。

また、パワーブローカーの怒りの矛先にも注目です。パワーブローカーの手下が2話でカーリたちフラッグスマッシャーズを追いかけて以降、カーリのもとには度々脅迫メールが届きます。これはもちろんカーリが血清を盗んだことが原因となっています。しかしパワーブローカーに大損害を与えた人物がもうひとりいます。血清を処分し、血清を作ることができるネイゲル博士を殺害したジモです。パワーブローカーに対してより大きな損害を与えたのはカーリよりもジモであることは明白です。しかしながらジモに対して刺客が差し向けられた描写はありませんでした。これは、パワーブローカーがジモの存在を把握出来ていないか、あるいはサムとバッキーが近くにいるため手を出せないかのふたつである事が考えられます。

シャロン=パワーブローカーだとして経緯をまとめると、フラッグスマッシャーズに血清を盗まれ、謎の自作自演をしてサム達と再会し、博士の居場所を明かした結果殺害され、フラッグスマッシャーズに殺す殺すのメッセージを送るだけで、4話ラストで居場所がわかったにも関わらず逃げられて、ジモに対しては手出しせずに、5話で再びフラッグスマッシャーズに殺すメッセージを送っているとても滑稽なヴィランになってしまいます。シャロン=パワーブローカーがサムたちを利用してカーリを追いたかったとすれば、パワーブローカーにとっては大誤算、大失敗となりました。

しかし、何らかの理由でパワーブローカーとシャロンが繋がっていた可能性はあります。そしてサムたちと再会して鞍替えをした可能性です。シャロンがラボの後始末をし、パワーブローカーに虚偽の報告をしていればパワーブローカーの怒りがジモに向かずにフラッグスマッシャーズにのみ向いていることも合点が行きます。

そして、シャロンを演じるエミリー・ヴァンキャンプさんはインタビューで「シャロンの最大の目的は恩赦を受ける事」だとコメントしています。

劇中のシャロンの恩赦を望む姿勢、そして俳優さんのインタビューまで嘘だとすれば、制作陣のサプライズはこちらの想像以上だと言わざるを得ません。それでこそMCUとも言えるのですが。

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シャロンのスマホ

5話ではシャロンがバトロックと電話をしているシーンがあります。そしてその時のシャロンのスマホはアップル製品ではありませんでした。これがなぜシャロン=ヴィラン説になるかというと、2020年のライアン・ジョンソン監督のインタビューに起因しています。

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」などを手掛けるライアン・ジョンソン監督は Vanity Fair とのインタビューにおいて、「Appleは、作中でiPhoneを使用できるようにしているけど、ミステリー映画を見る場合これは非常に重要な問題だ。カメラに映る悪役はiPhoneを使用できないんだよ」と内情を明かしました。「自身が手掛ける映画の中に、秘密にするべき悪役がいるすべての映画監督は、今僕を殺したいだろうね」とジョークも飛ばしています。

©2021 MARVEL,Disney

しかしこれは「悪役はiPhoneを使えない」のであって、「iPhoneじゃないから悪役」ではないのです。作品によって善人役はMac、悪役はWindowsとしているものもあるようですが、シビル・ウォーのトニー、スティーブの二人はアップル製品でもスターク・インダストリーズ製品でもなく、中国のVivoを使用していました。

from 「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」©2016 MARVEL,Disney

iPhoneではないからシャロンはヴィランとするのは根拠として弱いと言わざるを得ません。

バトロックに何を依頼した?

バトロックに何を依頼したかは5話まででは明かされていません。しかし依頼したからヴィランとは言えないのです。

バトロックがMCUに初登場したのは「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」です。S.H.I.E.L.D.の船レムリアスターを占拠して人質をとり、身代金を要求してきました。しかしこれはフューリー長官がバトロックに金を払ってさせた事でした。インサイト計画に疑念をもったフューリーはS.H.I.E.L.D.の誰も信用出来ないと考え、バトロックにレムリアスターを襲わせる自作自演をし、キャプテンに人質救出作戦をさせている間、最も信頼しているナターシャにインサイト計画のデータを奪ってくるよう指示していました。フューリーがバトロックを使ったからといって、フューリーをヴィランと呼ぶことはできません。

シャロンとバトロックが組んだとしても、結果を見るまでは何とも言えないのです。

ところで電話での会話の内容から1話の冒頭でヴァッサン空軍大尉が誘拐されたのもシャロンの依頼のように思えます。この誘拐の理由は最終話で明かされるのでしょうか?

©2021 MARVEL,Disney

バトロックとカーリのシーンを整理しておきましょう。

シャロン=パワーブローカーの場合、カーリは復讐のターゲットです。すなわちバトロックはカーリを殺すために仕向けられたと考えられます。

シャロンが正義の下で動いている場合、テロを阻止するためにバトロックを利用しているはずです。

この2つの目標は似ていて、カーリの無力化が到達点になります。武器が暴発してカーリが死んだり、実際には使えない武器でテロが失敗するケースが考えられます。とにかくテロが失敗すれば視聴者も一安心です。

この2つとは違って、シャロンが別のヴィランと結託している場合、カーリたちの目論見どおり進み、ひどい結末を迎える可能性があります。


現状を細かくみても、シャロンがヴィランである確たる証拠はありません。美術品を盗む事や賞金稼ぎを殺した事は抜きにしてですが、ヴィランの匂いがする、といった程度です。そして、シャロンがヒーローサイドにいる裏付けは、5話までではほとんど出来ません。

コミックのシャロンに目を向けると、S.H.I.E.L.D.の長官をつとめた時期があります。フューリーを演じるサミュエル・L・ジャクソンさんは現在72歳。フューリーの世代交代は数年以内、はやければ1~2年以内(フェーズ5に入るまで)に訪れるかもしれません。そしてドラマ「ワンダヴィジョン」で登場したS.W.O.R.D.も現在ヘイワード臨時長官が失脚し、長官が不在となっています。S.W.O.R.D.に関しては前長官の母マリアに変わってモニカ・ランボーが継ぐか、あるいは原作どおりアビゲイル・ブランドが登場する可能性もありますが、シャロンに椅子が回ってくる可能性もゼロではないかもしれません。

残された最終話、シャロンは誰のために、何のために、どのように動くのでしょうか。

当ブログでも紹介している日本未公開のアメリカで公開されている今作のトレーラーのうち、5話までに登場していないシャロンのシーンがひとつあります。

©2021 MARVEL,Disney

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駐車場らしきシーンですが、奥の赤い光は5話ラストのGRC本部の停電シーンと重なるものがあります。シャロンはマドリプールを出てニューヨークへと現れるのでしょうか?

ドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」第6話は 2021年4月23日(金)16時より ディズニープラスで配信です。

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