ソニー・ピクチャーズとマーベル・スタジオが共同制作したMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」のジョン・ワッツ監督が、海外メディア Collider とのインタビューで制作当時を振り返り、その裏話を語りました。
ジョン・ワッツ監督はトビー・マグワイアさんとアンドリュー・ガーフィールドさんのスパイダーマンを再登場させた経緯について、次のように述べています。
スパイダーマンの映画の記事を読むたびに、いつも感情的な反応をしていました。『アンドリュー・ガーフィールドの方が好きだ』とか『トビー・マグワイアの方が好きだ』とか。『サム・ライミ版が一番いい。ライミ版には絶対に及ばない』みたいな、暗黙の競争があるように感じていました。でも、私はスパイダーマンの映画を全部、まるで子供のように同じように愛しています。『スパイダーマンが誰か一人より優れている』ではなく、『みんながスパイダーマンである』という物語を語れたらどんなにクールだろう? 彼らが力を合わせれば、共通の経験を得て、個人としてよりも偉大な存在になれるんじゃないか? それが、物語全体の始まりとなった、大まかなテーマのアイデアでした。
本作はマルチバースを舞台とする事で、三人のスパイダーマンを集合させるアイデア自体は簡単だったとしつつも、それをどのように扱うかは様々な議論があったと言います。
「映画の第3幕で何が起こっているにせよ、ピーター・パーカーが大変なことになる! スウィップ、あのクモの巣はどこから来たんだ? スウィップ、あのクモの巣はどこから来たんだ?」と、無口な人物がいたのを覚えています。そこに、トビーとアンドリューを登場させ、危機を救い、そして去っていく。
私は「そんなのは作りたくない。絶対に作りたくない」と思いました。カメオ出演で登場するキャラクターが「こんにちは! 覚えてる? わかった、じゃあまたね」なんて展開は、「そんなのはありえない」と思ったんです。
誰が言い出したアイデアかは明かしませんでしたが、最後に少しだけ顔を見せるようなファンサ映画はやりたくなかったという監督は、彼ら自身の物語を構築していく事をやっていったと説明。
だから、同じ男の3つのバージョンが、本当に暗い時代に互いに助け合うことを学ぶという大まかなアイデアは、物語を構築するのに十分な感情的な基盤になると思いました。それを描いていくうちに、「なぜ彼らは皆ここにいるのか?何が起こったのか?どうしてこんな状況になったのか?」という疑問が湧いてきます。それが私たちのやり方です。そこから始めました。登場人物全員を真剣にキャラクターとして捉え、それが現実的で感情的なものであることを確認し、そこから物語を構築していくのです。
そして、脚本全体を書いてからトビー・マグワイアさん、あるいはアンドリュー・ガーフィールドさん、もしくはその双方に断られるのは「考えたくもなかった」というワッツ監督は、前述のようなコンセプトを説明した上で快く引き受けてもらったと明かしました。
そんな二人の登場シーンは、実は当初は実際の映画とは別のプランだったと言います。
トビーとアンドリューが映画に出演するという噂はありましたが、これは撮影中のことです。これは、うまく機能する脚本があっても完璧とは限らないという、もう一つの例です。脚本はもっと良くしていくことができます。脚本を書きながら、スパイダーマンたちをどこで登場させたいかを考えていたのですが、ピーターはメイおばさんが亡くなったことで悲しんでいて、ポータルが開いて2人のスパイダーマンが出てくる、という展開がずっと描かれていました。
たぶんどこかの屋上だったと思います。ぼんやりとしていて、まだ理解しようとしている。それからRedditを見ていて、「スパイダーマン2人が姿を現す時は、きっとこんな感じになるだろう」というファンアートを描いている人たちを見ていたんです。それが屋上でのアートでした。悲しい感じで、ドクター・ストレンジのポータルが2つ開いて、スパイダーマン2人が外に出てくる。「うーん、それは無理だ。もしみんながこうなると思っているなら、絶対にこのままでは無理だ」と思ったんです。
自分のアイデアがファンと被っていた事で、監督はこの大事なシーンを変更せざるを得なくなったと言います。
バスター・キートン(世界三大喜劇王)の言葉を思い出しました。彼はこう言っていました。「観客に私の予想を裏切ったと思ってもらうのが好きで、その後で裏切るんだ。」私は、観客は賢くて、ストーリー展開も予想できて、ジャンルも理解していて、それでいてサプライズがある、そういうストーリーテリングのアプローチが好きです。だから、たくさんのファンアートを見て、「みんなが予想していることと全く同じことは絶対にできない」と思った後、「誰も予想していないことは何か?」と考えました。
「クイーンズにあるネッドのおばあちゃんの家に二人のスパイダーマンが現れるシーンだ。Redditでそんなファンアートを描いている人はいなかった」と思いました。物語の中では、まさにうってつけでした。というのも、これはピーターの物語から初めて離れるシーンだからです。
落ち込むトム・ホランドさんのピーターに二人のピーターが声をかけるシーンの前に、ネッドの家で観客に先に二人のピーターを紹介する事で、ファンが考えていたものとは違う登場を演出する事に成功しました。
こういった変更の他にも、新型コロナウイルスのパンデミックの影響による変更は多々あったことがこれまでにも明かされています。
監督は先日の別のインタビューではパンデミック下での大作映画の制作での多大な精神ストレスを受けたことも語っていました。
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